「うちの子、自分の好きなことだけは一生懸命なんですけど……」
「やりたいことはやるけど、やるべきことはやらなくて…」
保護者の方から、こんなお悩みをよくお聞きします。
確かに、「自分からやる」という点では、一見「主体的」に見える場面もあります。
でも実はそこに、大きな勘違いが潜んでいることもあるのです。
「好き勝手やること」と「主体性」はまったくの別物
- 「やりたくないからやらない」
- 「気分じゃないから動かない」
- 「好きなことしかしたくない」
これは「主体性」ではありません。
それはただの“わがまま”や“感情まかせの行動”であって、
未来を切り開く力にはなりません。
本当の「主体性」とは何か?
主体性とは、**「自分の意思で、目的に向かって行動を選ぶ力」**です。
ときには、苦手なことややりたくないことでも、
「必要だからやる」「誰かのためにやる」と選び取る力。
つまり、感情ではなく、自分の目的・価値観・信念に基づいて動くのが主体性。
そしてここで忘れてはならないのが、
「誰かの役に立ちたい」「周囲のために行動したい」という利他の気持ちこそ、
主体性を育む大きな原動力になるということです。
本物の主体性とは、単に「自分のやりたいことをやる自由」ではなく、
「人のために力を発揮したい」「大切な誰かのために今自分ができることを選ぶ」という
“貢献の意志”を伴った自己選択でもあります。
主体性には、「自制心」や「責任感」だけでなく、
「周囲への思いやり」や「誰かの未来に関わる力になりたい」という心が宿っているのです。
主体性が発揮される場面とは?
- 失敗したとき、「ダメだった」ではなく「学びだった」と捉え直す
- 誰かに注意されたとき、「責められた」ではなく「気づかせてもらった」と考える
- 苦手なことでも、「必要だからやろう」と前を向ける
- 自分のためだけでなく、「チームや家族のために動こう」と行動を選ぶ
このように、出来事の捉え方を自分で選び取ることも、主体性の表れです。
同じ出来事が、誰にとっても同じ意味を持つわけではありません。
どう意味づけるかで、次の行動も結果も変わる。
主体性とは、自分の人生のハンドルを自分で握ることなんです。
名言に見る「主体性の真髄」
「人間は刺激と反応の間に、選択の自由がある」
― ヴィクトール・フランクル(『夜と霧』著者・精神科医)
フランクルは、過酷な強制収容所の中で、
「人間は状況に反応するだけでなく、“どう捉えるか”を選ぶ自由がある」と語りました。
この捉え方を選ぶ力=内的な主体性こそが、人生の質を変えるカギになるのです。
主体性が人生を変える
私たちやまなみコーチング学園では、
点数アップや偏差値だけをゴールにしていません。
- どんな環境でも「できる方法を探す」姿勢
- 言い訳ではなく、「できる一歩」を選ぶ思考
- 他人のせいにせず、「どう活かすか」を考える習慣
- そして、自分の力で誰かに貢献できる喜びを知ること
それが、**本当の意味で“自立した人”**を育てる土台だと考えています。
主体性は、未来を自分の手でつくる力
「わがまま」は、自分の欲求に従って行動すること。
でも「主体性」は、自分の価値観と、他者との関係を大切にしながら行動を選ぶこと。
目の前の状況をどう捉えるか?
どんな行動を選ぶか?
その積み重ねが、未来をつくります。
科学的根拠
自己決定理論(Self-Determination Theory:SDT)
- 提唱者:エドワード・デシ & リチャード・ライアン(Deci & Ryan)
- 概要:
人が内発的に動機づけられるには、次の3つの欲求が満たされる必要があるとされます。- 自律性(Autonomy) … 自分の意志で選べている感覚
- 有能感(Competence) … 自分にはできるという感覚
- 関係性(Relatedness) … 誰かとつながっている感覚
- 関連ポイント:
- 主体性=「自分の意思で意味づけ・行動を選ぶ力」は、自律性そのもの。
- 「誰かの役に立ちたい」「社会とつながりたい」という利他性も、関係性の欲求を満たす。
🔎 参考論文:Ryan, R.M., & Deci, E.L. (2000). Self-determination theory and the facilitation of intrinsic motivation, social development, and well-being.
認知行動療法(CBT:Cognitive Behavioral Therapy)
- 概要:
人は状況そのものではなく、その状況をどう「捉えるか(認知)」によって感情や行動が決まるとされます。 - 関連ポイント:
- 「失敗」を「ダメだった」と捉えるか、「学びだった」と捉えるかで、その後の行動と成果が大きく変わる。
- 主体性とは、出来事に対して“どんな意味づけを選ぶか”を自分で決める力でもある。
ロゴセラピー(ヴィクトール・フランクル)
- 代表著書:『夜と霧』
- 核心の考え:
「人はどんな状況でも、それにどう意味を見出すかという自由がある」 - 関連ポイント:
- 主体性とは、自由と責任をもって意味づけを選ぶこと。
- それが人生の質や行動を決めていく。
社会的脳科学・共感研究
- 概要:
利他行動や共感に関わる脳の領域(前頭前皮質、島皮質、扁桃体など)は、発達期において訓練や経験によって活性化する。 - 関連ポイント:
- 「誰かのために何かをしたい」という気持ちは、人間にとって自然な脳の働き。
- 主体性は、「自分のために動ける力」であると同時に、「誰かのために意味を持って動く力」。
結論として…
主体性とは、単なる自分勝手な自由ではなく、
「自分で意味づけ・選択し、責任をもって誰かのためにも動ける力」であり、
その力は心理学・教育学・脳科学の各方面からも強く支持されています。
さいごに
「わがまま」や「好きなことをやる自由」は、楽しいかもしれません。
でも、それだけでは社会では通用しません。
むしろ、やりたくないこと・思い通りにいかないことをどう捉え、
「自分のため」「誰かのため」にどう行動するかで、
その人の未来は決まっていくのです。
だからこそ、
「今、自分はどんな意味づけをして、どんな行動を選ぶのか」
その問いに向き合うことが、成長の第一歩です。
わたしたちは、そうした“本物の主体性”──
「利他の心をもって、自ら動ける力」を育てる場所でありたいと思っています。